ギャンブル中毒回顧録 第15話
1.人間罫線
先程の1での勝利のあと、バンカー4連勝となった。こうなるとバンカーの連勝を信じて、次も強気にバンカーだ。
先程の1での勝ち以降は、3枚目を引くこともなく危なげない勝利が続いてるので、ここは勢いに乗りたいところだが、次ベット額を上げて負けたら意味がないなーと考えてしまうのがバカラの難しいところだ。
私がベット額に悩んでいたところ、彼女は30万ウォンチップ(約3万円)をバンカーに置いた。つられて私も同額をバンカーに置いた。
すると親父は我々への対抗心を露わにするかのように、こちらを睨みつけてプレイヤーにまたもや100万ウォンチップ(約10万円)を置いた。
そしてまたもや怒気をはらんだ声で、早くしろとディーラーをせかしている。
多分このテーブルに座るまでに、相当負けがこんでいるんだろうなと直感的に感じた。
果たして、今回の勝負はあっけなく終わった。
親父はピクチャーピクチャーで我々は8を引き当てた。
さっきまで一進一退だったのに、いまは面白いようにチップが増えていく。
我々がチップの払い戻しを受けている間に、今度は親父が先にチップをどんと置いた。いつもと同じ100万ウォンチップだ。
張った先はバンカーだった。
バンカーが5連勝。私はバンカーに張る気満々だったのだが、ここで彼女は少し小考してプレイヤーに10万ウォンチップ(約1万円)を置いた。
「え?」と私が驚きの声をあげると、「あの人と反対のほうが勝てる気がしない?ただ自信ないから10万ウォンにする。」と彼女は言った。
「なるほど。たしかに。」
ついてない人に乗るのは博打の定石ではない。私も彼女と同額の10万ウォンを置いた。
結果はプレイヤーの我々が7を引き当てまたもや勝利した。
その後も親父と我々は、常に逆に張った。親父が勝つこともあったが勝率は圧倒的に我々がよかったため、どんどんチップが増えていった。
親父は手持ちから100万ウォンチップが全てなくなったあたりで、苛立ちを一切隠さず、乱暴に椅子から立ち上がると10万ウォンチップをかき集めてポケットに入れてその場を立ち去った。
親父の姿が見えなくなったのを確認して彼女とハイタッチすると我々は勝ち分を数えだした。お互いそれぞれ250万ウォンほどの勝利だった。
2.初めてのハイブランドでお買い物
カジノに着いて、まだ2時間足らずであったが勝負の熱がどっと引いていくのを感じていた。
250万ウォン勝ちは想定外すぎるし、これ以上さらに勝てる気もしない。これが今日のマックス地点のような気がしていた。
もしかしたら彼女も同じ感覚だったのだろうか。勝ったお金でお買い物行って、ご飯食べにいこう!と彼女から私に提案してきたことに私は少し驚いた。当然もっと続けようと言い出すのではないかと思っていたのだ。
換金した札束をしまい込むと、私と彼女はハイブランドショップが揃う江南地区へとタクシーで向かった。
彼女は勝ち分で欲しかったというGUCCIの財布を購入した。
彼女が買い物をしている間、何気なく店内を見回すとなかなかかっこいいGUCCIのパーカーがあった。
ハイブランドのものは財布などの小物くらいしか持っておらず、そもそもハイブランドで服を買うという発想がなかった。
値札を見ると100万ウォンほどなので今日の勝ち分の半分足らずで買えてしまう。
普段なら絶対に購入することはないのだが、今回の戦利品として私もなにか欲しかったのでお買い上げをしてしまった。
GUCCIの大きめなショッピングバッグを誇らしげに手に持ちお店を出る。なんだか自分がお金持ちになった気分を感じていた。
我々はそのままタクシーに乗り込んで、ホテルへと戻っていった。
3.セブンラックカジノ初訪問
さて夕飯時も、水原に行ったことなどはすっかり忘れてしまったようにカジノの話で盛り上がった。
夜はもうカジノに行く気はあまりなかったのだが、カジノの話ばかりしているともっと稼げる気がしてくるし、もう一勝負行ってくるかと気になってくる。食べ終わったらカジノに行こう!と提案してみたが、彼女はエステの予約を取ってしまっていると言った。
ほぼ一緒にいたのにいつの間にかにエステの予約なんて取ったのだろう。女性の美に対する執着にはいつもながら驚かされる。
エステに行く彼女を見送り、ホテルの部屋で時間を潰していようかとも思ったのだが、私はふつふつと湧き上がるバカラ熱を抑えられず結局ウォーカーヒルとは別の近場のカジノに行くことにした。
セブンラックカジノは、ソウル駅に近く明洞からならウォーカーヒルよりもだいぶ近い。
初めての1人バカラデビューに心が浮き立っていたのだが、その日は金曜の夜ということもあって、あまりの人混みの多さに圧倒されてしまった。
セブンラックカジノは繁華街から最も近いカジノのためもともと人が多いようだ。そしてどのテーブルにも人ごみができており盛り上がっていた。
勢い勇んでカジノに来たものの、あまりの雰囲気の違いに私は突然心細さを感じてしまっていた。
とりあえず先程の勝ち分から100万ウォン(10万円)をキャッシャーで換金する。
そしてミニマムベットが最も低いバカラテーブルを探しだした。
さすが低レートテーブルだけあって満席で後ろにも人がたくさんいた。立ちながらベットするようなプレイヤーまでいて、熱量に圧倒されてしまう。
バカラを打ちたかったけれど、それ以上に落ち着いた環境でのんびり打ちたいと思った私は、引き続きカジノ内を徘徊してブラックジャックテーブルに腰掛けた。
結局ブラックジャックを1時間ほどプレーして200,000ウォン(約2万円)ほど勝利したところで、プレーをやめて再びバカラテーブルの様子を伺いに行ったが、夜むしろさっきより盛り上がっており座れる様子ではないのでそのままカジノを去った。
ホテルに戻ると彼女はまだ戻っていなかった。
多分戻ってきたら彼女はまたカジノに行こうと言うだろうなー。と思い、先にシャワーを浴びて夜の戦いに備えることにした。
しかし、戦いの疲れが自分でも溜まっていたのだろう。シャワー後、ベッドで横になっていた私はいつの間にか眠りについてしまっていた。