ギャンブル中毒回顧録 第1話

1.バックパッカー時代

1.バックパッカー時代

学生時代にバックパッカーを経験し、旅の魅力にはまった。
最初は世界史に出てくる歴史的建造物や遺跡を見るのがただただ楽しみだった。

学業そっちのけでアルバイトに精を出し、ひたすらためたお金で中国大陸・アメリカ大陸・ヨーロッパ・アジア・アフリカを旅した。

世界中の遺跡や美しい風景、新しい文化や町並みに触れるたび、沸き立つ心の感動に自分自身驚かされた。
世界は広い。本当に広い。自分はいつも新しいもの、感動に触れていたい!

ただ一方で、いつも異邦人である自分に疑問を抱くようになっていった。

エアーズロック、グランドキャニオン、マチュピチュ遺跡、ナスカの地上絵、アジアの辺境

全て一人で行った。一人で感動をただ噛み締めた。誰かそばで、スゴいね!キレイだね!と、つきなみの言葉でいいから、言い合える相手が欲しかった。

そしてそれは、心許した誰かであってほしかった。

2.イタリア人女性ソフィアとの出会い

2.イタリア人女性ソフィアとの出会い

ソフィアとの出会いは、アメリカ大陸を旅していたときだった。当時私は大学3年。

必死にアルバイトをしてためた100万円でアメリカ大陸を旅した。ロサンゼルスからアメリカ大陸を東へと横断し、カナダへと行き、アラスカまで陸路で抜けオーロラを見るというのが今回の目的だった。

しかし、トロントについた頃には私の所持金はまだ旅をはじめて1ヶ月ちょっとだというのに50万円まで落ち込んでしまう。いつもの旅なら、月10万円ちょっとで生活できていたはずなのに。

もちろんアメリカは東南アジアや南アメリカにに比べて物価が高い。

しかし理由はそれだけじゃなかった。

私には。。。あのときの私にはお金以上に大切なものがあった。それが、同じバックパッカー仲間のソフィアだった。

ボストンの長距離バス乗り場で、モントリオール行きのバスを待つ乗り合い所で彼女と出会った。

バスを待つ停留所で、私と同じように大きなバックパックを持っていたソフィア。鳶色のアーモンド型の目をした美しい女性だった。

まるで、海外のホームドラマに出てきそうな可愛らしい欧米系の女の子がそのまま大人になったような。旅人らしく、着飾っていない無造作な髪型と化粧っ気のないその姿が、逆に彼女本来の美しさを際立たせていた。

二人とも重いバックパックをベンチの脇に置いて、バスを待っていたとき彼女から話しかけてきた。

Where are you going? (どこに行くのか?)と。

私は返答に少し躊躇してしまった。

こんな美しい女性に話しかけられるなんてというのもあったが、それ以上に彼女が欧米女性でアメリカの土地を旅しているにもかかわらず、その英語の発音が少したどたどしかったからだ。

モントリオールに行く。と私は答えた。そして、出身はどこ?と。

私もモントリオールへ行く。私はイタリアから来たといった。

私は初めて知った。ヨーロッパの人は、母国語でなくても英語は堪能な人ばかりだったので、英語を苦手とする欧米人もいるのかと。

しかし、お互いに英語にそこまで自信がなかったからこそ、盛り上がるということもある。

手振りを交えながら、撮りためた写真、ガイドブックで旅の軌跡を話すと、彼女も色々と話しをしてくれた。

バスを待つ間の会話。それは15-20分ほどだったろうか?すでに私は、恋をしていたのだろう。

孤独で話し相手がほしかった私に、この鳶色の瞳の少女が与えてくれた人と触れ合う時間、なにかお礼がしたかった。彼女がそこにいてくれたことに、そして私に束の間の恋心を与えてくれたことに対して。

私は、おもむろにベンチを離れると、彼女のために、水とタバコ、そしてピザパンのようなものを買った。

頭の中には、私が大好きなSimon&GarfankleのAmericaが流れていた。というか、気分はまさにそれだった。

その歌詞が、、、、これだ!

私たち恋人になって結婚するの
二人の未来を一緒にしてね”
“僕の鞄のなかには
ちょっとした「不動産」も入ってるのさ”
そして僕らは煙草ひと箱に
ミセス・ワグナーのパイを買い込んだ
僕らは歩き始めたんだ
“アメリカ”を探す旅へと…

“ねえ、キャシー”
ピッツバーグで
グレイハウンドバスに乗り込むときに
僕は言ったのさ
“今じゃミシガンも夢のように思えるよ”
サギノーからヒッチハイクするのに
4日間もかかったのさ
僕はアメリカを探しに旅立ったんだ

バスのなかじゃ大笑いさ
乗客の顔を見てゲームで遊んだんだ
彼女はギャバジンのスーツを着た男は
スパイだって言ったのさ
僕はこう言った
“気を付けろ
アイツの蝶タイは実はカメラだぞ”って!

“タバコを放り投げてよ
レインコートに1本残ってたはずだから”
“1時間前に最後の1本を吸っちゃったわ”
僕は仕方なく景色を眺め
彼女は雑誌を読み始めた
向こうの広い野原に月が昇っていった…

“ねえ キャシー 僕は迷っちゃったよ…”
彼女が眠っているのがわかってて僕はつぶやく
心に穴が空いて痛いんだ
どうしたらいいんだろう?
ニュージャージーの高速道路で
走る車を数えていたんだ
みんなが”アメリカ”を探しにやってきたんだ

みんな”アメリカ”を探しにやってきた
みんな”アメリカ”を探しにやってきた…