賭博黙示録Yo-chi 第1話 アメリカンドリーム

1.出会い

1. 出会い

大学3年の夏、僕はアメリカのロサンゼルスにいた。大学のプログラムによる短期留学でUCLAというアメリカでも超名門大学で講義を受けていた。

クラスメートは約30人で全員アジア人。日本人が5、6人居たが基本的に絡みは無く大半を1人で過ごしていた。

英語が喋れる訳でも無く、広大なキャンパスは僕にとってあまりにも孤独な空間を持て余していた。当時、スケボーにハマっていた僕はMonster Beatsのヘッドフォンを首に掛けアメリカ人かのような出立ちで校内をスケートボードで駆け回っていた。

Nike SBのダウンに身を纏い俺はジャパニーズスケーターだと言わんばかりに体格が勝るアメリカ人に引け目を取らないような威風堂々の立ち振る舞いでいた。

そんなある日、ビバリーヒルズの交差点を散歩していた時、恐らくメキシコ系であろう厳つい青年が私の肩に思いっきりぶつかって来た。

「Eat  Shit!!Get the fuck out」

英語が苦手な僕でも流石に意味を把握した。

「Sorry….」

何事も無くその場は通り過ぎたが次の日、キャンパス内でまたしてもこの男と遭遇することになる。

「Hey⁉︎Japanese Guy I saw you yesterday!!」

まさか、こんな男がアメリカ屈指の名門校の生徒だったとは。

人は見かけによらずとはまさにこのことだと思った。

昨日とは打って変わって彼は僕に陽気に話しかけて来た。

彼の名前はBabs。メキシコ系の移民で父親はアメリカ人であった。

この出会いこそ、僕を地獄に突き落とすことになるとはこの時は思いもしなかった。

そう、この時は。

2.You better lose yourself in the music

2.You better lose yourself in the music

彼は厳つい容姿とは裏腹にとても優しかった。なんせ約2週間、ひとりぼっちのキャンパスライフを過ごしていた僕にとって初めて打ち解けた友人と言える存在であった。

彼と校内のSubwayでランチを共にし、授業が終わったら一緒にパーティーに行こうぜと連絡先を交換した。

初めてできた外国人の友達にどこか日本人ということを忘れるくらいの優越感を覚えていた。そしてiPodでEminemを爆音で聴く僕の体は縦に揺れていた。

その日の夜、指定された場所に行くと物騒な通りの暗闇からBabsが出てきた。ここだよと倉庫のような場所に案内された。

幸いにもその場所は僕の滞在先から歩いて20分程の場所にあった。

入り口を案内され中に入ると奥には全身に刺青が入った大柄の出立ちの男が5人と金髪のブロンド美女、3人が酒を飲みながら盛り上がっていた。

部屋中は煙だらけで流石の僕でもそれが大麻であることは察した。男5人とBabsは酒を飲みながらトランプでゲームをしていた。見たことも無いゲームであったがお金を賭けたゲームであることは瞬時に分かった。

「お前もやるから見ておけ。」

とBabsは言った。ゲームは特殊なUNOのようなものでその上がり方も様々だった。

少し複雑ではあったが、僕はそのゲームのルールを瞬時に理解した。昔から賭けのゲームには自信があったのですぐに参加することにした。

戦略的かつ運要素の強いゲームではあるがその日、僕は500$を勝つことができた。Babsは女を1人連れて帰っていいぞと僕に言ってくれた。これが自由の国アメリカだ!その日は美女と夜を満喫した。

次の日、僕はまたその賭場へと足を踏み入れた。この日は前日よりも多い10人前後のアメリカ人がいた。このゲームは特に人数の制限が無いため、僕を含め9人でゲームを進めた。

この日も運よく200$くらいのプラスで終わることができた。体に吸い込まれた大麻とウイスキーの味が妙に香ばしくこの日は滞在先近くのBarで1杯引っ掛けようと店に入った。

俺はハリウッドスターだと言わんばかりにカウンターにドカっと腰掛けウイスキーのロックを注文した。

この日は雨が降っていたせいか店内には60近い老人客と僕の2人しかいなかった。

この店には以前も来たことがありマスターは僕のことを覚えていてくれた。

「ご機嫌だな。いいことでもあったか?」

マスターは退屈そうに僕に声をかけて来た。

「今日はカードゲームで$200勝ったんだ。」

誇らしげに僕は昨日からの出来事を話した。

トランプを使ったカードゲームということだけでマスターは何かを察したのかすぐさま僕にこう返した。

「お前、UCLAの学生だな。」

この時僕はマスターの放った一言が何を意味するのか全く分からずにいた。

「そうだぜ!!日本から3ヶ月だけ来てるんだ。」

誇らしげに答えた僕とは裏腹にマスターの目はどこか呆れたかのような奇妙な表情だった。