ギャンブル中毒回顧録 第13話
1.ソウルウォーカー初訪問
カジノより街の両替所のほうが換金率が良いと考えて、我々は明洞の換金所に向かった。
まず先に私が手持ちの半分である5万円を換金した。
彼女は10万円を取り出しすべて換金している。
「いくら持ってきたの?」と尋ねると、15万円持ってきたと舌を出して笑った。
(旅行にしてはちょっと多いし、こいつ、最初からカジノが目的だったんじゃ。そしていきなり持ち金の2/3を換金するとは!)
私は彼女と結婚を前提に付き合っているので一抹の不安を覚えながらも愛想笑いをした。
そしてウォン紙幣を握りしめると、一緒にウォーカーヒルへと向かった。
タクシー内でなんのゲームで遊ぼうかと話し合ったところ、バカラがやりたいと言い出す。
バカラ。。。覚えがある。トロントで日本円1,000万円以上のお金をテーブルに置いていた男が勝負していたゲームだ。
彼女に簡単なルールを聞いた。
バンカーかプレイヤーに賭けて9に近いほうが勝ち。10、J、Q、Kは10と数えて、バンカーとプレイヤーそれぞれが2枚のカードを引き、そこで8,9が出たら勝負が決まる。
8,9以外の場合、3枚目を引く場合と引かない場合があるが条件は複雑なのでやりながら教えるよ。とのこと。
詳しいバカラのルールはこちらから。
「なんで、バカラ知ってるの?」
と聞くと彼女は少し躊躇した後、「ごめん。実は学生時代にキャバ嬢をやっていてお客さんとアフターでバカラで遊んだことがある」と告白した。
「そうなんだ。聞いてなかったわ。まぁいまはもうやってないんだし、昔のことはいいよ。」と私は言ったものの、彼女が夜の蝶だったという事実に本音は少しとまどっていた。
ウォーカーヒルは明洞から相当距離があった。文字通り、丘の上にあるカジノだ。
パスポートを見せて、中に入ると、そこは人で溢れかえる別世界が広がっていた。
私と彼女はバカラテーブルを探そうと少しカジノ内を探索していると、はたしてすぐに見つかった。ひときわ人でごった返しているテーブルがバカラテーブルだった。
ミニマムベット額は50,000₩。日本円にして約5,000円だ。
もっと安いテーブルを探そう、と彼女と一緒に他のテーブルを探したところミニマムベット10,000₩の卓が見つかった。他のプレイヤーはいなかった。
我々はテーブルに腰掛けると、手持ちの韓国紙幣を全てチップに変えた。
ふと彼女の目線を追いかけると、彼女は罫線を見ていた。そこで簡単に彼女に罫線を見る方法を簡単に教えてもらった。
そして彼女がまず10,000₩を置いて、ゲームがスタートした。
ディーラーがプレイヤーサイドとバンカーサイドにカードを表向きにパンパンと慣れた手付きで開いていく。
すぐに彼女は「え?絞れない!!」と声をあげた。
するとディーラーが流暢な日本語で「絞りたいならあちらですよ。」と、先程のミニマムベット額50,000Wのテーブルがあるあたりに目を向けながら教えてくれた。
韓国のカジノのディーラーは全員ではないが日本語が話せる人が多い。
「別にここでよくない?」と彼女に聞くと、絞れないバカラはバカラじゃないという返答が返ってきた。
私は彼女に対してこんな一面があったのかと不安を覚えた。
そして、我々は、大バカラへと向かう。一応確認をこめて周りを見回したが、50,000ウォンのテーブルが一番安い。次のレートはミニマム100,000ウォン。約1万円だ。
ミニマム50,000₩で誰も座ってないテーブルがあったので、我々はそこに腰かけた。
ここで私は、自分の運命を変えることになるカジノゲーム。バカラを初めてプレイすることとなる。
2.ビギナーズラック炸裂
私は一切プレイせず、彼女がプレイする様子をしばらく見学していた。
そして、次第にバカラというゲームを理解してくる。
彼女はかなり派手に賭けていた。
50,000₩賭け負けると、100,000₩賭けて、罫線に自信があるときはマックス500,000₩を賭けていた。
段々と人が集まってくる。どうやらこのゲームは罫線を作っていくと、人が寄ってくるゲームらしい。
そして、バンカーが4連勝をしたタイミングで、私は初めてチップを置いた。
賭けたのはプレイヤー。
他の人たちは、皆バンカーにチップを置きはじめた。
彼女も「えー。バンカー4連勝だし、 バンカーだよ!」と言いながら、バンカーにチップを置いた。
「いや5連勝はさすがにないでしょ!」と私は言った。
すると、私にカードが配られる。
先ほど彼女がしていたのを見よう見まねで私はカードを絞った。
私のバカラ初戦は、99のナチュラル8。これがかなりいい出目であることは分かったが、彼女が逆に張っているので喜びを出すことはしなかった。
そして、彼女にカードが配られる。
彼女は、ゆっくりとカードを絞り始めた。結果は、87の5。
一発で勝負が決まった。
潮が引いたように、人が去っていた。
あーあ。ツラ切れちゃった。。。と彼女はつぶやいた。
ん?ツラって何と聞くと。彼女はツラについて、説明しだした。
(こいつ相当やりこんでるな。。。)と私はかなり不安になりながらも、バカラの魅力に既に引き込まれていた。
その後、しばらく一緒にバカラをプレイした。
テンコとツラが良い感じに続いたため、勝率がかなり良く、わずか2時間足らずで私は5万円勝ち、彼女は15万円勝ちとなった。
もう少し続けたい!と彼女はねだったが、まだ初日だしあと3日あるからとなだめて、その日はカジノを後にした。
その夜、興奮冷めやらぬ我々はベッドの中で熱く燃え上がったことは言うまでもない。