賭博黙示録Yo-chi 第5話 借金

1.質屋

5−1.質屋

 

翌日、昼食時にBabsから連絡が入った。

 

いつものSubwayで待ち合わせるとBabsは悄然とした表情で僕にこう投げかけた。

 

「昨日の負け分の700$、返せるか?今日中に頼むよ。」

 

もはや、いくら負けて、いくら借金をしたのか僕の記憶には一ミリも無かった。

 

「ごめん。今は返せない。でもきちんと返すから少し待ってくれ。」

 

この事態が深刻であることなんてこの時はこれっぽっちも思っていなかった。

 

「ダメだ。待てない!!」

 

Babsの顔立ちは彼と初めて出会った交差点でのそれよりも怖いものであった。

 

「ここでのルールは翌日だ。もし守れないなら金は貸してやる!!ただし10日で5割の利息だから、今すぐ払ったほうがいいぞ。」

 

とりあえず僕は手持ちの200$を彼に渡した。

 

これが闇金利であることは僕にも理解ができたので授業をサボりそのままBabsから紹介された質屋に向かった。

 

大切にしていたAPEの時計と指輪、ピアスを売り何とか350$を用意した。

 

残りの150$は借金をし、10日後に225$で返すことを約束して倉庫を後にした。

 

何のために海外に来たのか。

 

途方に暮れる僕はこの時すでに後戻りできない状態になっていた。

 

 

2.初出勤

5−2.初出勤

 

夕方、僕はBarへと向かった。

 

借金の225$はバイトで稼いで返そうと思っていた。

 

この時の僕は、手持ちの現金はほとんど無くクレジットカードで食い繋いでいた。

 

店に到着するとマスターは開店の準備をしていた。

 

「おい。誰が雇うって言ったか?」

 

マスターは全く間に受けていなかったようだ。

 

「時給10$な。」

 

マスターはそれだけ伝え僕に掃除用のモップを渡してきた。

 

海外初バイトというワクワク反面、借金の不安が頭から離れなかった。

 

それでも今は目の前のお金を工面することに精一杯だった。

 

英語が話せない僕は接客では無く主にドリンクと食器洗いを担当することになった。

 

メニューのドリンクは分からないものばかりだったが一通り、よく出るメニューだけ覚えた。

 

その日は客も少なく9時を回る頃にはバイトを上った。

 

「毎日は雇えないぞ。」

 

帰り際にマスターはこう言った。

 

僕は意を決してとりあえず、今の状況を全て話すことにした。

 

するとマスターは神妙な面持ちで僕に250$を手渡してきた。

 

「明日も来い。」

 

それだけ伝え僕に帰るよう促した。